最寄の駅。
サム 「イツキどうだ?その鍵に合うロッカーはあったか」
イツキ「流石にそこまで甘くはないみたいね。このままだと全国のロッカーを巡る破目になりそうよ」
サム 「それはかなり厄介だぞ。おいぼうず、おまえもテレビなんか見てないで、ちっとは手伝え」
ツトム「その調子だと先越されるぞ」
サム 「はあ?」
テレビではワイドショーが流れていて、テロップには連続ロッカー荒しと出ている。
ツトム「この監視カメラの映像、どう見てもコレクターだよな」
サム 「まじぃな、向こうやる気満々だぞ」
遊園地のロッカールーム。
イツキ「ここでもないか…」
サム 「しょうがない、次行くぞ」
背の低い男「あのぅ、ちょっと、宜しいですか?」
サム 「ごめん、今ちょっと宜しくない」
背の低い男「あーいや…、あのー」
ツトム「うっせーぞ中年ちび、なんか文句あんのか」
中年ちび「あ…いや…、その鍵のことでですね…」
サム・イツキ・ツトム「!?」
中年ちび「やっぱりその鍵のことででしたか!」
ツトム「ちび、この鍵に何の用だ」
中年ちび「あ…いや…で…、伝言を頼まれているんですけど…」
ツトム・サム「んだとちびー!さっさと言えー!」
中年ちび「え、ちょ、ま…」
イツキ「あんたたち少し落ち着きなさい!」
ツトム「…あの人に言われると、なんかむかつくんだけど」
サム 「俺も」
イツキ「で、この鍵がどうしたの」
中年ちび「えーと、この鍵を、タクシーの運転手に見せろとのことです」
サム 「…この紙を?」
中年ちび「はい」
ツトム「見せるも何も、ただの白紙じゃねーか」
中年ちび「いーえ」
サム 「なに?」
中年ちび「色がついてますね、なんでしょうこの色、わたし色には詳しくないんですよねー」
ツトム「喧嘩売ってのか?このちび」
イツキ「とにかくこの紙をタクシーに見せればいいのね?」
中年ちび「いーえ」
イツキ「?」
中年ちび「タクシーの運転手に見せるんですよ」
ツトム「…とりあえず、一発殴るぞ」
サム 「おう」
タクシーのよく通る道。
サム 「へいタクシー!」
ツトム「そのタクシーの止め方、どーゆーつもりだ?」
サム 「うるさい、そんなもん好きずきだろーがよ」
イツキ「あっ、止まったわよ、あのタクシー」
サム 「よっしゃーこのやろう!」
ツトム「…」
運転手「えー、どこに行きましょう?」
イツキ「あのーこの紙を見せろって言われたんですけど」
運転手「ちょっとお待ちください…」
無線 「ピーガー…こちらザーッ、ガー」
運転手「あのーこちら三番タクシーのサカイですが…がですねぇ」
無線 「ガーゴーあーあれね、それだったらピービーッでザザザー」
サカイ「ハイわかりましたー」
ツトム「…何がわかったんだ?」
サム 「心からわからん」
大きな銀行。
ツトム「…本当にここでいいのか」
サム 「あのサカイとかいう運転手は、この銀行だとかいってたな」
イツキ「とにかく中に入ってみようよ」
受付 「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で」
イツキ「あのぅ、この銀行でこの鍵を見せろって言われたんですけど」
受付 「…」
ツトム「…あの中年ちび、もう一発殴りに行くか」
サム 「さんせー」
受付 「少々お待ち下さい」
ツトム「警備員呼ばれるんじゃねーだろーな」
サム 「逃げる用意しとく?」
イツキ「あんた達ちょっとは黙りなさい」
サム 「…おまえに言われるとなんかむかつく…」
スーツの男「…ではこちらにどうぞ」
ツトム「…なんだ?」
巨大な金庫。ガシャン!ガシャーン…。
サム 「なんてこった…」
ツトム「巨大な金庫の中に…」
イツキ「ちっちゃいロッカー?」
スーツの男「はい。このロッカーをお預かりするように、依頼されておりました」
ツトム「中身は?」
スーツの男「は、中身は私どもの知るところではありませんので…」
サム 「正直、中身をおまえに見せたくなかったんだがなあ…」
イツキ「…そうね」
ツトム「はあ?…ちょっとおまえら、ここまできて俺はのけ者かよ!」
イツキ「…それもそうね」
サム 「いいか、中身を見ても怒るなよ」
ツトム「訳わかんねーよ、いいからさっさと見せてくれ」
ガチャリ!
サム・イツキ「…」
ツトム「…なんだ…これ?」
スーツの男「初版の『明日のジョー』の第三巻ですね、これは」
ツトム「うっせーぞハゲ、そんなこと訊いてんじゃねーよ!」
サム 「…」
ツトム「おまえらまじでこんなもんに命張ってたのかよ?頭おかしーんじゃねーの」
イツキ「あんたにこれの、何がわかるってゆーのよ?」
ツトム「ああ?わかるよ漫画本だろ!それとも第三巻って言ってほしいのか、おい!」
イツキ「…」
サム 「お前の気持ちもわかるけどよぉ…、俺達にとっては大事なものなんだよ。わかるか?」
ツトム「…だけどよ」
サム 「こんな物のために危険な目に遭わせちまったのは、悪かった…」
ツトム「ホントにな」
イツキ「何言ってんのよ、ここまで勝手についてきたのはあんたじゃない!」
サム 「いいんだよイツキ!」
イツキ「だって…」
社員 「社長!第十四コレクター‘コクトウ’がやって来ました!」
スーツの男「なんだと!?君達、それを持って早く逃げるんだ!早く!」
サム・イツキ・ツトム「コクトウ?」
スーツの男「君達をずっと狙ってた奴だ。早く!」
サム 「…どっから逃げろってんだよ!?」
スーツの男「金庫を出た所に秘密の地下通路がある!ここは我々に任せなさい」
地下通路。
ツトム「臭え!下水道じゃねーかここ」
イツキ「うっさい!音響くのよ、ちょっと静かにしなさい」
サム 「あの銀行、どうなったろ」
イツキ「さあ…ね」
ツトム「なぁ、この漫画でコレクターを倒せるとかってまえ言ってたよなぁ?どうゆー意味だ、それ」
イツキ「…」
サム 「あーあれか…、おまえこの話知ってるか」
イツキ・ツトム「?」
ツトム「まあ何となくは」
サム 「この刊の内容は?」
ツトム「いや、わかんねぇ、読んだことねーし」
サム 「だろ、その内容が…」
グシャ…!
その時確かに見た、サムの巨体が宙に舞うのを。
イツキ「サームッ!」
ツトム「…コレクター」
コレクター「ハーハッハッハ!これが今まで俺をてこずらせてきた男の最後か」
サム 「がっ…がは」
イツキ「大丈夫?サム」
サム 「逃げろイツキ」
イツキ「え?」
サム 「ここは、俺に任せて、ささっと逃げろって言ってんだよ!」
イツキ「何言ってんのよこんな状態で」
サム 「ぼうず!イツキを連れて逃げろ!」
ツトム「…イツキ行くぞ」
イツキ「あんた何言って…」
ツトム「サムは弱点知ってんだよ!」
イツキ「…わかった」
サムはコレクターを倒せない。サムがもう戻ってこないことは分かっていた。多分イツキも…。
■■ To be continued. ■■