明日のジョーの三巻


PAGE TOP  2  PAGE LAST










 ビルの屋上にて。
コレクター「ムアーッハッハッ!もう逃げ切れないことは解っただろう。さっさとあの在処を教えろ」
中年男「誰が貴様などに教えるものか…!貴様に教えるくらいなら…」
コレクター「!」
 中年男、屋上から飛び降りる。

 ずうっと前、ある大男が豆腐に足を滑らせて頭を打ち、死んでしまったという話を聞いた事がある。人は何が切っ掛けで危険に晒されるか分かったものではない。この時も…。

中年男「うわああああああ――――」
 ドサッ。
 ある日、飛び降り自殺に遭遇した。
ツトム「うおっ…。おいっ大丈夫…なわけねーか。…ぬおぉ、どうすればいいんだぁ〜」
中年男「ううぅ…そこの君」
ツトム「な、何だなんだ!?」
中年男「た、頼みたいことがあるんだ」
ツトム「た、頼みたいこと?医者か、救急車か、警察か」
中年男「そんなものはどうでもいい。…い、いいかい、我々には今、時間が限りなく無いのだよ。解るかい」
ツトム「い…いや、あんたには時間はなさそうだけど…」
中年男「早くしないと奴が来る…。き、君この鍵のロッカーの中身を…」
ツトム「はあ?」
中年男「早く逃げろお!」
 その時、空からもう一人ガタイのいい男が降ってきた。
 ずうぅん。
コレクター「そこのぼうず、今何かそいつから渡されたな。そいつを渡せ」
 その刹那、コレクターの後ろから別の大男が現れ、コレクターの後頭部にとび蹴りをくらわせた。
サム 「チェスト――」
 どかん!
 もの凄い音とともに、コレクターはじゅう…、5メートルは軽く吹っ飛んでいった。
ツトム「うっ、うわー」

 気が付いたら自分のアパートまで逃げ帰っていた。
ツトム「…なんなんだよ一体…わけわかんねーよ。…この鍵どうするよ」
 ガチャリ。
 その時だった、突然ドアが開き、まったく見ず知らずの二十代くらいの女性が入って来た。それがイツキとの出会いだった。
イツキ「あなたさっき、コレクターに襲われてたわね」
ツトム「え、あ、はあ?てかあんた誰だよ、いきなり他人の部屋に入ってくんなよ!」
イツキ「うるさい私の質問に答えて」
ツトム「と…取りあえず、そのコレクターってなんなんだよ」
サム 「イツキ、いきなりそんな事言ったって通じる訳ねぇだろ。コレクターってのはさっきあんたを襲ってきたでかい野郎のことだ」
イツキ「サム!」
ツトム「あ、あんたさっきの」
サム 「兎にも角にも、俺たちは何としてもコレクターより早くその鍵のロッカーの中身を手に入れなきゃーならんのよ」
ツトム「…」
イツキ「あんたが持ってたって危険なだけでしょ、さっさと渡しなさい!」
ツトム「俺にあんたらを信用しろってのか!?」
イツキ「なんで私たちがあんたに信用されなきゃならないのよ、さっさと鍵を渡しなさいよ!」
ツトム「それが人に物事を頼む態度かー!」
サム 「イツキ、少しだけ黙っててくれ」
イツキ「っ…」
サム 「おまえが俺たちのこと信用できないのはよく分かる。土足で上がり込んでんだもんな」
ツトム「ああ!?マジだ!靴脱げよ、大家に怒られんの俺なんだぞ」
サム 「でもな、イツキも言ったように…」
ツトム「人の話聞けよ」
サム 「…でもなイツキも言ったようにさぁ、お前が持ってたって危険なだけなんだよ、解んべ?」
ツトム「…」
 確かにその通りだった。
サム 「それに、少なくともコレクター…、さっきの奴より信用できんだろ」
ツトム「ちょっと…訊いていいか」
サム 「ん…何だ?」
ツトム「この鍵を渡した中年男のことは、前から知ってたんだろ?」
サム 「まぁな」
ツトム「じゃあ何であの人はあんた等じゃなく、俺に鍵を渡したんだ」
サム 「…」
ツトム「鍵をそのコレクターって奴から守るなら、俺よりあんた等の方が好都合だろうがよ」
イツキ「目的の違いよ」
ツトム「目的の、違い?」
サム 「まぁ、そーいうこった」
ツトム「あんた等とあのオッサンは、一体何をどうしようとしてんだ」
イツキ「それこそあんたには関係ない事じゃないのよ」
ツトム「いいやあるね!言っとくけど、鍵持ってるのは俺だぞ」
イツキ「…っ」
サム 「あの男は或る物を運ぶのが目的だった」
ツトム「何をどこに運びたかったんだよ」
サム 「どこに持っていきたかったのかは知らん。中身はおまえにとってはどーでもいい物だ。ハッキリ言って大した金にもならん」
ツトム「あんたらの目的は」
サム 「俺はコレクターを殺す為にそいつが必要なんだ」
ツトム「こ、ころ?…えーと、イツキって言ったっけ、あんたの目的はなんなんだよ」
イツキ「…」
サム 「…」
ツトム「ま、まぁ言いたくないならいいんだけどさ」
イツキ「それで鍵は渡してくれるの?」
 ガシャーン!
イツキ・サム・ツトム「!?」
コレクター「鍵…ロッカーの鍵…か…?フ、フハハハハハハ!」
イツキ「あんた鍵をさっさと渡して!」
サム 「イツキ!ぼうず、ここは逃げんぞ」
ツトム「え、あ、おれもぉ?」
イツキ「何してるのさっさとして!」
コレクター「ハーッハッハッハッ!別に鍵を取られる心配なんかしなくていいんだぞう、そんなもの俺には必要ないからなあ!ハッハー」

 結局騒動に巻き込まれ、どうしようもないままイツキ達の車に乗り込んだ。崖に沿った峠道、車通りは無し。
ツトム「だあああ!スピード出し過ぎだってオイ、死ぬ死ぬぅ!」
イツキ「サムもっとスピード出して、追い付かれるよ!」
サム 「わかってんよ!クソッタレ」
ツトム「人の話を聞けー!この速さで何に追い付かれるってんだよ?」
コレクター「ワハハハハハー!」
ツトム「あ…あいつ走って…オイッ!追い付かれるって!…どうなってんだよあれっ…もっとスピード出せー!」
サム 「もう無理だっつーの!」
 イツキ、銃を取り窓に乗り出す。そしてコレクターに銃口を向ける。
イツキ「死ねー!」
ツトム「おいっあんた何だそりゃ!」
イツキ「何って見れば分かるでしょ!あんた異星人?」
サム 「イツキ止めとけ」
ツトム「そーだ、そんなもんこの国で使ってんじゃねー!」
サム 「そんなでかい銃使ったら反動で車から落っこちんぞ。てか車から振り落とされてーのか!?」
ツトム「そっちの意味でかーい!」
イツキ「…チッ」
ツトム「何だ?!今の舌打ちは一体何だー!」
イツキ「じゃあどうすんのよ、追い付かれるじゃん」
サム 「次のカーブでそこの袋の中身を道路にばら撒け」
ツトム「何が入ってんだよ?てか重っ!」
サム 「見てわかんだろ異星人かおまえ」
ツトム「んだとコラ」
サム 「はらカーブに入るぞ、さっさとしろ」
ツトム「んなこといったって…ちくしょー重めー!」
 ジャラジャラジャラー。
イツキ「…」
ツトム「…ぱ…パチンコ玉?」
コレクター「フッ…フォー!」
 コレクターがパチンコ玉に滑り派手にこける。そのまま崖に転落した。
ツトム「すげぇ…」
イツキ「サム、なんであんなもの持ってんの?」
サム 「まあなんだ、気にすんな」


PAGE TOP  2  PAGE LAST










 最寄の駅。
サム 「イツキどうだ?その鍵に合うロッカーはあったか」
イツキ「流石にそこまで甘くはないみたいね。このままだと全国のロッカーを巡る破目になりそうよ」
サム 「それはかなり厄介だぞ。おいぼうず、おまえもテレビなんか見てないで、ちっとは手伝え」
ツトム「その調子だと先越されるぞ」
サム 「はあ?」
 テレビではワイドショーが流れていて、テロップには連続ロッカー荒しと出ている。
ツトム「この監視カメラの映像、どう見てもコレクターだよな」
サム 「まじぃな、向こうやる気満々だぞ」

 遊園地のロッカールーム。
イツキ「ここでもないか…」
サム 「しょうがない、次行くぞ」
背の低い男「あのぅ、ちょっと、宜しいですか?」
サム 「ごめん、今ちょっと宜しくない」
背の低い男「あーいや…、あのー」
ツトム「うっせーぞ中年ちび、なんか文句あんのか」
中年ちび「あ…いや…、その鍵のことでですね…」
サム・イツキ・ツトム「!?」
中年ちび「やっぱりその鍵のことででしたか!」
ツトム「ちび、この鍵に何の用だ」
中年ちび「あ…いや…で…、伝言を頼まれているんですけど…」
ツトム・サム「んだとちびー!さっさと言えー!」
中年ちび「え、ちょ、ま…」
イツキ「あんたたち少し落ち着きなさい!」
ツトム「…あの人に言われると、なんかむかつくんだけど」
サム 「俺も」
イツキ「で、この鍵がどうしたの」
中年ちび「えーと、この鍵を、タクシーの運転手に見せろとのことです」
サム 「…この紙を?」
中年ちび「はい」
ツトム「見せるも何も、ただの白紙じゃねーか」
中年ちび「いーえ」
サム 「なに?」
中年ちび「色がついてますね、なんでしょうこの色、わたし色には詳しくないんですよねー」
ツトム「喧嘩売ってのか?このちび」
イツキ「とにかくこの紙をタクシーに見せればいいのね?」
中年ちび「いーえ」
イツキ「?」
中年ちび「タクシーの運転手に見せるんですよ」
ツトム「…とりあえず、一発殴るぞ」
サム 「おう」

 タクシーのよく通る道。
サム 「へいタクシー!」
ツトム「そのタクシーの止め方、どーゆーつもりだ?」
サム 「うるさい、そんなもん好きずきだろーがよ」
イツキ「あっ、止まったわよ、あのタクシー」
サム 「よっしゃーこのやろう!」
ツトム「…」
運転手「えー、どこに行きましょう?」
イツキ「あのーこの紙を見せろって言われたんですけど」
運転手「ちょっとお待ちください…」
無線 「ピーガー…こちらザーッ、ガー」
運転手「あのーこちら三番タクシーのサカイですが…がですねぇ」
無線 「ガーゴーあーあれね、それだったらピービーッでザザザー」
サカイ「ハイわかりましたー」
ツトム「…何がわかったんだ?」
サム 「心からわからん」

 大きな銀行。
ツトム「…本当にここでいいのか」
サム 「あのサカイとかいう運転手は、この銀行だとかいってたな」
イツキ「とにかく中に入ってみようよ」
受付 「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で」
イツキ「あのぅ、この銀行でこの鍵を見せろって言われたんですけど」
受付 「…」
ツトム「…あの中年ちび、もう一発殴りに行くか」
サム 「さんせー」
受付 「少々お待ち下さい」
ツトム「警備員呼ばれるんじゃねーだろーな」
サム 「逃げる用意しとく?」
イツキ「あんた達ちょっとは黙りなさい」
サム 「…おまえに言われるとなんかむかつく…」
スーツの男「…ではこちらにどうぞ」
ツトム「…なんだ?」

 巨大な金庫。ガシャン!ガシャーン…。
サム 「なんてこった…」
ツトム「巨大な金庫の中に…」
イツキ「ちっちゃいロッカー?」
スーツの男「はい。このロッカーをお預かりするように、依頼されておりました」
ツトム「中身は?」
スーツの男「は、中身は私どもの知るところではありませんので…」
サム 「正直、中身をおまえに見せたくなかったんだがなあ…」
イツキ「…そうね」
ツトム「はあ?…ちょっとおまえら、ここまできて俺はのけ者かよ!」
イツキ「…それもそうね」
サム 「いいか、中身を見ても怒るなよ」
ツトム「訳わかんねーよ、いいからさっさと見せてくれ」
 ガチャリ!
サム・イツキ「…」
ツトム「…なんだ…これ?」
スーツの男「初版の『明日のジョー』の第三巻ですね、これは」
ツトム「うっせーぞハゲ、そんなこと訊いてんじゃねーよ!」
サム 「…」
ツトム「おまえらまじでこんなもんに命張ってたのかよ?頭おかしーんじゃねーの」
イツキ「あんたにこれの、何がわかるってゆーのよ?」
ツトム「ああ?わかるよ漫画本だろ!それとも第三巻って言ってほしいのか、おい!」
イツキ「…」
サム 「お前の気持ちもわかるけどよぉ…、俺達にとっては大事なものなんだよ。わかるか?」
ツトム「…だけどよ」
サム 「こんな物のために危険な目に遭わせちまったのは、悪かった…」
ツトム「ホントにな」
イツキ「何言ってんのよ、ここまで勝手についてきたのはあんたじゃない!」
サム 「いいんだよイツキ!」
イツキ「だって…」
社員 「社長!第十四コレクター‘コクトウ’がやって来ました!」
スーツの男「なんだと!?君達、それを持って早く逃げるんだ!早く!」
サム・イツキ・ツトム「コクトウ?」
スーツの男「君達をずっと狙ってた奴だ。早く!」
サム 「…どっから逃げろってんだよ!?」
スーツの男「金庫を出た所に秘密の地下通路がある!ここは我々に任せなさい」

 地下通路。
ツトム「臭え!下水道じゃねーかここ」
イツキ「うっさい!音響くのよ、ちょっと静かにしなさい」
サム 「あの銀行、どうなったろ」
イツキ「さあ…ね」
ツトム「なぁ、この漫画でコレクターを倒せるとかってまえ言ってたよなぁ?どうゆー意味だ、それ」
イツキ「…」
サム 「あーあれか…、おまえこの話知ってるか」
イツキ・ツトム「?」
ツトム「まあ何となくは」
サム 「この刊の内容は?」
ツトム「いや、わかんねぇ、読んだことねーし」
サム 「だろ、その内容が…」
 グシャ…!
 その時確かに見た、サムの巨体が宙に舞うのを。
イツキ「サームッ!」
ツトム「…コレクター」
コレクター「ハーハッハッハ!これが今まで俺をてこずらせてきた男の最後か」
サム 「がっ…がは」
イツキ「大丈夫?サム」
サム 「逃げろイツキ」
イツキ「え?」
サム 「ここは、俺に任せて、ささっと逃げろって言ってんだよ!」
イツキ「何言ってんのよこんな状態で」
サム 「ぼうず!イツキを連れて逃げろ!」
ツトム「…イツキ行くぞ」
イツキ「あんた何言って…」
ツトム「サムは弱点知ってんだよ!」
イツキ「…わかった」

 サムはコレクターを倒せない。サムがもう戻ってこないことは分かっていた。多分イツキも…。






■■ To be continued. ■■





PAGE TOP  2  ↓PAGE LAST
×CLOSE
HOME

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送