秘密な二人


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 とあるなんでもない週末のカフェテリア。ある人は一人ノートパソコンと睨み合い、またある人は、友達とのお喋りに花を咲かせている。そんな中、一組のカップルが席に着いた。
タカシ「…なぁコユキちゃん?」
コユキ「ん、どーしたタカシ?」
タカシ「ん〜っと、…あのさぁ?」
コユキ「今日のその服いーね」
タカシ「えぇっ、あっ…そっ、そぅ?」
コユキ「うん、何かタカシっぽい」
タカシ「ははは、俺っぽいかぁ〜そっかー…それでさぁ?」
コユキ「タカシちょっと髪のびてきた?」
タカシ「やっ…あーそぅ?…うんそろそろ切らなきゃね」
コユキ「うぅん、髪の長いタカシもカッコ良いよ」
タカシ「そ、そぅ?んじゃあ今度は髪伸ばそっかなぁ…じゃなくて、あのさぁ?」
コユキ「良い天気だねぇ」
タカシ「っだね!ってかコユキちゃんって好きな動物とかっている?…ふぅ」
コユキ「うん、いるよ」
タカシ「マジで!?」
コユキ「うん、タカシが好き」
タカシ「…はぁ、いや、そぅじゃなくて…」
コユキ「私が二本足以上で立ってる生物ダメなの知ってるよね?」
タカシ「も、もちろん知ってるよー!いやぁなんつーか何となくさぁ」
コユキ「そーだよねー、そうそう知ってた?この地球上で手のある動物って人間だけなんだってー!猿とかは、手っぽい感じだけど、あれはまだ前足らしいよー!つまり 二足歩行するのは人間だけなの」
タカシ「…そーなんだ…。じゃあ足の多い動物がダメなら、逆に足の無い…」
コユキ「それは最悪」
タカシ「…だね。…じゃあ鳥は二本足…」
コユキ「…」
タカシ「…だね、うん」

 この世には実に、様々な人々がいる。肉派とサラダ派、甘党と辛党、ジャニーズ派とYAZAWA派、ジオンと連邦、ジョースター家とディオ、明治派とロッテ派、島田紳助のように場の空気を読める人がいれば、ふかわりょうの様に読めない人もいる。
 そして、この二人、タカシとコユキは電撃的一目惚れで両想いとなった。しかし、地球上に完璧なカップルなど、果たして居て良いのか?否、むしろ存在するのだろうか!?はてさて二人は、本当に同類の人間なのだろうか…。

 次の日の夜、タカシの友人シュンジ宅。
シュンジ「まーたおめぇ、言いそびれたんか」
タカシ 「うん、…いや言おうとは頑張ったんだけどね」
シュンジ「まったく、ホントこれで言えなかったの何千回目だって話しだよ」
タカシ 「なぁっ、何千回目って…。だってさぁ、シュンチャンだったら言えるかよ!」
シュンジ「別に、俺は爬虫類なんか好きじゃねーし」
タカシ 「うえぇっ!そーなの!?俺てっきりシュンチャンは仲間なのかと…」
シュンジ「俺が何でお前ん家いかねぇか、知ってるか?」
タカシ 「えっ?…っ!?まさか…」
シュンジ「そーゆーこった」
タカシ 「そーだったのか…、俺なんだか今、シュンチャンとの間に大きな溝を感じたよ」
シュンジ「そーか?」
 そう、タカシがコユキに言えない秘密、実はタカシは動物(特に爬虫類)愛好家なのだ。しかも、そんじゃそこらのマニアとは訳が違う、一部の間では【先生】とまで言われている程の、熱狂的爬虫類愛好家なのだ。 ちなみに彼は今後、爬虫類の好きな人=ハチュラーという言葉を流行らせようとしている。
シュンジ「でもさ、いくらお前がトカゲ大好きでも、彼女は生き物まったくダメなんだろ?」
タカシ 「蛇に関しては最悪って言ってた」
シュンジ「彼女に動物に関して、おまえは何て言ってんの?」
タカシ 「…ブツブツ…」
シュンジ「聞こえねーよ変人!!」
タカシ 「へっ、変人!?」
シュンジ「いーから、お前は彼女に動物のこと、なんて言ってあるんだよ!?」
タカシ 「…俺も無理って」
シュンジ「…タカシ、お前って、超・負け犬だな」
タカシ 「…だね」
 シュンジはタカシが思っているほど仲が良い訳ではない。しかしタカシにとって、普通の悩みを相談できるシュンジという存在は特別だった。タカシの周りにいる他の友人は、爬虫類仲間しかいないからである。

 その頃、コユキ宅。
コユキ「もっしーアズ?」
   ―もしもし、アズサさん?―
アズサ「コユキ?オッツー久しぶりー!どーしちゃったのよー最近?全然連絡くれないしさぁ」
   ―コユキさんですか?お疲れ様、そして、お久しぶりです!近頃はいかがされましたか?全く音沙汰がなく、心配していました―
コユキ「う〜ん、まぁねぇ…」
   ―ええ、そうですね…―
アズサ「彼氏とはうまくニャンニャンしてんのー?」
   ―彼氏さんとは上手にイチャイチャしているのですか?―
コユキ「うん、超ハッピーハッピーだよ」
   ―はい、とても幸せで上手にいっています―
アズサ「なーんだそっかー、ふぅん」
   ―はい、そうですか、うむ―
コユキ「ふぅん、って何でぇ?」
   ―うむとは、いかがしましたか?―
アズサ「いやぁ、だって今彼って、コユキが今まで付き合ったのとはかなり違う感じみたいだしさぁ…」
   ―それは、今現在の彼氏さんは、昔コユキさんの付き合っていた彼氏さんとは大幅に印象が違う様子なので…―
コユキ「うぅーん、そっかなぁ?」
   ―ええと、そうでしょうか?―
アズサ「もぅぜーんぜん、超違うじゃーん!ジョジョの二章と三章くらい違うじゃん」
   ―全く、とても違っています、集英社コミックスの【ジョジョの奇妙な冒険】で例を挙げますならば、波紋による攻撃スタイルから幽波紋【スタンド】による攻撃スタイルに 移り変わった時ほどの違いがあります―
コユキ「キャハ!まーたジョジョネタだぁ!ほーんとアズってジョジョラーだよねー」
   ―ははは!またジョジョの奇妙な冒険から引用した例えですか!本当にアズサさんはジョジョの奇妙な冒険の中毒者ですね―
アズサ「なーに言ってんのよー!そっちこそ漫画オタクじゃーん!!彼氏はその部屋のキチョイ状態知ってんの?」
   ―何を言っているのですか!そちらこそコミックス単行本の収集者では御座いませんか!!彼氏さんはそのお部屋の気分を害する有り様を、御覧になった事はあるのですか?―
コユキ「それなんだよねぇ…」
   ―そこが問題なのです…―

 彼氏に裏があれば、彼女の方にも裏が存在するのは、この世のセオリーである。
 この二人の場合、タカシは爬虫類オタクで、コユキの方は漫画オタクだったのだ。
 とは言っても所詮は漫画、と思った方は少なくないだろう。しかしコユキの一番イタイ所は、コスプレにまで入り込んでしまっている所である。それはすでに 固定ファンまで出来てしまっている程の入り込み様であった。しかも、それに追い討ちをかけるようなタカシの言葉が以前にあったのだ。
 それは、まだ付き合って間もない頃…。

 とある街角。
タカシ「いやぁ今日は良い天気だね、コユキちゃん」
コユキ「ねぇ、タカシ君って本とかって読むの?」
タカシ「え…あっ、あぁ本?う〜ん読むってゆーかぁ家にあるのは事典(爬虫類の)とかが多いかなぁ、コユキちゃんは?」
コユキ「漫画とかって読んだりするの?」
タカシ「…、あぁ漫画ね、いや漫画は駄目だよ!だって最近の漫画家は、描写(爬虫類の)もロクに出来てないくせに、当たり前のように(爬虫類は)悪役にしたりして、 しかも(爬虫類は)どーでもいいよーな役ばかりだし…」
コユキ「じゃあ…漫画は…好きじゃないん…だ?」
タカシ「えっいや、…コユキちゃんは漫画とか読むの?」
コユキ「…うぅん、全然見ないね」
 まさに地獄のカオス状態である。よくもまぁこれだけお互いを傷つけ合うカップルが存在したものだ。

 そして話はタカシの友人シュンジに替わる。彼にもまた、タカシはもちろんのこと、誰にも言えない裏の顔があった。

 某有名大学・秘密の地下室。
 コンコン…。
見張り番「合い言葉は?」
シュンジ「ジーク・デスト!」
見張り番「イエス、ジーク・デスト!良く来た同士」
 ガチャ、ギギギギギ…。  ここは、ズバリ言って、秘密結社の秘密基地である。タカシの友人シュンジは、実は秘密結社デストゲイザーのB級諜報部員なのだ。  これを読んで急に白けててしまった方、どうか頑張って読み進めてほしい。ちなみに秘密結社デストゲイザーのスローガンは【必要悪は正義】である。あぁっ、コラ、読むの止めるな!!
 シュンジが今日、秘密基地に来た理由、それは特別な任務の為であった。

 暗い部屋。
シュンジ「ジーク・デスト!」
謎の声 「うむ、ジーク・デスト。B級天使シュンジ・トーテンポー君、今日はよく来てくれたね。」
シュンジ「ははっ、大天使様、勿体なきお言葉」
大天使様「ハッハッハ、トーテンポー君、君が仕えているのは【裁く神】デストゲイザー様であり、私ではない。敬礼は解き給え」
シュンジ「いえ、自分が仕えているのはデストゲイザー様でありますが、そのお声を唯一聞き取る事ができる大天使様でもあると考えております!」
大天使様「よく言ったトーテンポー君、プラス3デストゲージ!」
シュンジ「イエス、プラス3デストゲージ!有り難く頂戴します」
 (この組織は点数制を採用している。しかし一定のポイントを集めてさえいれば昇級出来る訳でもないようだ。プラス3デストゲージ=3ポイント獲得)
大天使様「トーテンポー君、これは他の者に聞かれては、あまり良くない事なのだが…今回の件は、私が君をデストゲイザー様に推薦したのだよ」
シュンジ「大天使様、自らデストゲイザー様に…、このトーテンポー感謝の極みでございます」
大天使様「いや、トーテンポー君の今までの働きを評価したならば、当然の事だと考えている。君の若さゆえ、正当な評価を与えられない私を許してほ しい…、他の天使達にもメンツがあるのだ」
シュンジ「理解しております、それでデストゲイザー様は何と?」
大天使様「ふむ、それなのだが…」
 会話を聞くだけでも怪しさ100万点である。シュンジは果たして何と言われたのか、それはあえて伏せておこう。それは決して「なーんだ、そーゆー事かー」って 読むのを止めさせない為ではない、そんな低次元な理由では断じてない!…はず…。












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 その頃、タカシはというと、泣きながら一時間前に死んでしまったコモド大トカゲのコモ太♂を氷漬けにし、保存しようとしていた。
 タカシ宅。
タカシ「ううぅ…コモ太ぁ〜何で俺を置いて逝っちゃうんだよぉ〜、こんな…こんな大きくなるまで一緒だったのに…、必ず、いつか必ず現代の科学力がアップ して蘇生技術が完成したら、絶対に生き返らしてやるからな!それまでチョット寒いだろうけど…少し待っててくれよ」
 一応言っておくが、タカシは本気である。万が一、本当に死体の蘇生技術が完成したならば、彼は開発者を拉致してでもコモ太を生き返らせるだろう。
 そもそもコモド大トカゲを飼育するなど、生半可な労力ではない。体長3メートルもあるコモド大トカゲに噛まれたならば、腕の一本くらい平気でなくなるし、 生活環境を整えるのだって簡単ではない。しかも言ってしまえば、全世界に五千匹程度しか存在しないコモド大トカゲは、特別保護指定動物なのだ!つまりタカシは 国際的犯罪者なのである。ハッキリ言って、一般家庭で飼育するのは絶対無理だろう。
 しかし、何とタカシは祖父から譲られたコモド大トカゲを少年の頃から世話し、膨大な努力と溢れんばかりの愛情で、寿命をまっとうさせてしまったのだ! それほどの愛があるのだから、これくらい考えても当然と言えば当然である。

 そして、タカシがコモ太を氷漬けにして保存しようとしている頃、コユキはバイト先で、友人にある決断を打ち明けていた。

 メイド喫茶【キャラフル・キャンディー】控え室。
アミ 「ち、ちょっとコユキ、それって素で言ってんの!?」
コユキ「うん、もう決めたの。だって彼氏の性格からいって、私がメイド喫茶でバイトしてるなんて知ったら、百パー引くもん!だからこのバイトとはバイバイする」
アミ 「でーもー…、コユキこのバイト楽しいって言ってたじゃん、こんなの探してたって…コユキ辞めるなんてアミ悲しい…」
コユキ「うん、でも今月一杯は働くからさ」
 実際にコユキがメイド喫茶でバイトをしているとタカシが聞いて引くかどうかは別として、タカシが爬虫類マニアであることが益々気まずくなったのは事実であろう。
 そして翌日、タカシにとってコモ太の悲しみも吹き飛ぶような、衝撃的かつ革命的に嬉しい出来事が起こった。

 夕刻、タカシ宅。
シュンジ「…よう」
タカシ 「シュンちゃん!?何で、こ…これは夢か!?シュンちゃんが家に来てくれるなんて…」
シュンジ「そんな嬉しいか…?まぁいいや、入っていい?」
タカシ 「う、うん!どーぞどーぞ、ちょっと散らかってるけど」
シュンジ「おう、気になるのは散らかってる以前の問題だ」
タカシ 「…、大丈夫この時間は皆まだおとなしいから」
 何と、決してタカシの家に近付かなかったシュンジが、おじゃましたのだ!それはもう、タカシは大興奮だった。
タカシ 「今コーヒー入れるから、適当に座って、チョットだけ待っててよ、帰らないでね!」
シュンジ「…ってか、座布団で蛇がとぐろ巻いてんだけど…」
タカシ 「こら、コニシキ!そこで寝ちゃ駄目だっていつも言ってるだろ」
コニシキ「シャーッ」
コニシキ、何処かへいなくなる。
シュンジ「…」
タカシ 「ごめんねホント、家あんまりお客さん来たことなくてさ」
シュンジ「えっ、いや、…そうか…だろうな」
タカシ 「えぇ〜っと、コーヒー豆の缶が確かこの辺に…あった!」
 パカッとコーヒー缶を開けると、中から小さなトカゲが出てきた。
タカシ 「トカピ、またお前はそんな所に入ってぇ」
シュンジ「…トカゲが蓋も閉めたのか」
タカシ 「すぐコーヒー煎れるからね!」
シュンジ「ちょっと待てぇっ!!おめぇトカゲ入りのコーヒーを人に出すつもりか!?」
タカシ 「大丈夫だよ、ちゃんとトカピは出したから」
シュンジ「今すぐ缶コーヒーでいいから買って来い」
タカシ 「そ、そぅ?うん解った、すぐ買って来るからね!ホントほんの30分くらいだから、帰らないで待っててね!!」
 タカシ、猛ダッシュで家を出る。
シュンジ「結構な距離だな…。さてと」

 そして25分後。
タカシ 「ただいまぁー!!か、帰ってない!?シュンちゃんまだ帰ってないよね!?ぜぇ、ぜぇ…」
シュンジ「お、お帰り…。ってか俺は、そこまで信用のない人間なんだな…」
タカシ 「そ、そんな事ないよ、ただ何か心配でさ!」
シュンジ「…そうか」
タカシ 「そんなことよりコーヒーは何がいい?シュンちゃんの好きなやつ分からなかったから、全種類買ってきたよ」
シュンジ「また、えらい沢山買ってきたな」
タカシ 「へへへ、もう何かシュンちゃんが来るなんて夢みたいだよ!あっそーだ、保護指定がかかっちゃってて、他では現地に行かない限り絶対に見れない保護動物の ペット・コレクション見る!?マジで、すっげぇから!!」
シュンジ「…いや、つーかそれって犯罪だろ」
タカシ 「大丈夫だよ、ちゃんと育ってるし」
シュンジ「ははは、そーゆー問題じゃないな」

 それから5分後。
シュンジ「よし、俺そろそろ帰るわ」
タカシ 「ええっ!?さっき来たばっかじゃん。まだよくない?」
シュンジ「なに言ってんだ、もう30分以上いるじゃねーか、俺は忙しいんだよ!」
タカシ 「そ、そーか…、そーだねうん、じゃあまたいつでも家来てよね!」
シュンジ「あ、あぁまた来んよ」
タカシ 「絶対だよ、いつでも皆待ってるからね!シュンちゃんに見せたい仲間だっていっぱいいるんだからね!!」
シュンジ「え…あぁそうか、おぅまた必要になったら来るよ」
タカシ 「必要?」
シュンジ「何でもねーよ!それよりこの荷物が重いんだ、俺が背負うの手伝ってくんねぇ」
タカシ 「オッケー、シュンちゃんすげぇ荷物だな、山でも登るの?」
シュンジ「おぅまあな、ロッキー山脈を縦走すんだ」
タカシ 「すげぇなシュンちゃん!!」
シュンジ「まぁな、じゃーあばよ」
タカシ 「おぅ、達者で!」
 バタン。…ガシャーン!ゴロゴロッ…。シュンジ去る。
タカシ「…シュンちゃん来た時あんな大荷物だったっけ…?まーいーや、何てゆーか、友情だよね!」

 …果たしてシュンジは本当に友情でタカシの家に来たのだろうか?まぁ、それはともかく、タカシは良い気分だった。












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 シュンジのおかげで元気を取り戻したタカシは、久し振りに街に繰り出した。前から狙っていたバジリスク(トカゲ)を、いかがわしくない方のペットショップへ買いに 行ったのだ。
 しかし、そのペットショップのあるビルの二階には、コユキのバイト先であるメイド喫茶が存在することをまだ二人は知らない。

 ビル地下一階。ペットショップ【モンスターハウス】
博士 「おぅ、タカシではないか!久し振りではないか」
タカシ「ご無沙汰です博士、今日はバジリスク買いに来ました」
博士 「バジリスクか、なかなか良い選択ではないか」
タカシ「いやぁ、水の上を走るの生で見てみたくて」
博士 「なかなか良い事であるな、タカシお前は飼育に関しては素晴らしいが、知識に関してはまだまだだからな」
タカシ「ははは、いやぁ博士には誰も敵いませんよ」
博士 「そぉかぁ?いやぁータカシ、嬉しいこと言ってくれるではないか。どーだ、わしの行き着けの喫茶店で語らわんか?」
タカシ「お供します!」

 タカシはお供するべきではなかった。博士の行き着けの喫茶店とは、正に同じビルの二階にあるメイド喫茶だったのだ。

 キャラフル・キャンディ。
メイド「お帰りなさいませご主人様ー」
タカシ「…はぁ」
博士 「うむ」
 博士タカシ、席に着く。
博士 「どーだねタカシ、なかなか素晴らしい店だろう」
タカシ「いやぁ、何てゆぅか見てて恥ずかしくなりますね」
博士 「ハハハハハ、何事も慣れであるよ」
タカシ「はぁ」
 その頃、バックルームにて。
メイド「まーた下のトカゲ親父だよ。ごめん悪いけどコユキ、あのテーブル頼める?」
コユキ「えぇ〜、…うん!私、頑張る!!」
メイド「ありがと〜、それじゃあお願いします!」
 トカゲ親父(博士)と一緒にいるトカゲの入った籠を持つタカシと、キャピキャピのメイド服を着て接客しているコユキ。二人の秘密が遂に、そして同時に明かされた。
コユキ「失礼致しますご主人様、何をお持ち致しま…あ」
タカシ「…コユキ?」
博士 「むむ、どーしたのだね」
タカシ「…」
コユキ「…し、失礼しましたご…ご主人様、何をお持ちしますか?」
博士 「タカシはコーヒーでいいか?」
タカシ「え、あっ…はい」
博士 「それではコーヒー二つ頼むよ」
コユキ「はい、かしこまりました…ご主人様」
タカシ「…」

 バックルーム。
メイド「ち、ちょっとコユキ?落ち着いて、ちょっ、て、店長ー!!」
コユキ「もぅいやぁー!!絶対、ぜぇーったいタカシ引いてた!もぅ最低最悪!なんでよぅ…」
店長 「コユキちゃん、何処行くの!?チョットー!!」

 店内。
博士 「何か裏の方が騒がしいな…?」
タカシ「博士、すいません、やっぱ今日は帰ります」
博士 「な、なんだぁいきなり?おいタカシーっ!」
 まさに二人にとって、最低最悪な出来事であった。しかし嫌なことは続くものである。

 タカシが家に帰ると、スーツを着た謎の男が玄関前に立っていた。
スーツ男「ヤマシタ・タカシ君だね」
タカシ 「…はい、何かご用ですか?」
スーツ男「少し話しを聞きたいのだが、いいかい」
タカシ 「…別の日じゃあダメですか?」
スーツ男「ダメだね」
 そう言うと、男は一枚の紙を見せた。
タカシ 「…令状?」

 この後は、あっと言う間であった。タカシの家にいた動物達は全て没収され、タカシは親が保釈金を払うまでの二日間を留置場で過ごした。
 しかし、タカシは絶望の中で二つほど疑問を感じた。なぜ飼ってはいけない動物を飼っているとバレてしまったのか、そして氷漬けにしたコモド大トカゲの死体が 冷凍庫に入っているのに、こんな直ぐ釈放されていいのだろうか?…まさか!
 もしかしたら、コモ太は見つからずに済んだのでは、今も冷凍庫の中で凍ったまま帰りを待ってるのではないか!

 タカシは全力で走った、早く家に帰りコモ太がまだ冷凍庫にいるか調べる為に…。
タカシ「ただいまぁっ!」
 生き物のいなくなった部屋には、タカシの声は何だか酷く間抜けに感じられた。
 タカシは息を切らせながら冷凍庫を開けようとするが、突然恐ろしくなった。真意を確かめるには開けるしかない、しかしタカシはどうしても冷凍庫を開ける ことができなかった。と、いうか動くこと自体ができなかった。
 … 。
 ただそこに立ったまま二時間が過ぎた。その間、タカシは様々な事を考えた。連れて行かれたペット達は一体どこに行くのだろうか?もし野生に帰すのだったら、 きっと彼等はみんな死んでしまうだろう。一体誰が通報したのか、博士は怒ってないだろうか、コユキは何故あんな所にいたのだろう、…コユキ?
タカシ「は…はは、あはは、はぁーはっはっはっは!!」
 タカシは泣きながら大爆笑した。コユキにはもうバレてしまっているのだ。これ以上いったい何を恐れる?何をビビッているのだ!!
 ガチャッ…。
タカシ「…」
 冷凍庫の中に、コモ太の姿はなかった…。

 しかし、コモ太は警察に没収などされてはいなかった。きっと誰もが薄々気付いていると思うが、この男が持っていた。

 秘密の地下研究所。
シュンジ「一体それはどーいう事ですか!?」
大天使様「何をそんなに驚くトーテンポー君?我々がいつもしてきた事ではないか」
シュンジ「し、しかし…警察に通報するとまでは聞いておりません!」
大天使様「そんなに焦らずとも大丈夫だよ、君の友人も今頃は親の金で無事に釈放されただろう」
シュンジ「しかし動物達は、タカシのペット達はどーなりました!?」
大天使様「それは、まぁ正義を遂行する為の必要悪だな」
シュンジ「必要…悪」
大天使様「これで君も、プラス300デストゲージで晴れてA級諜報部員だな、おめでとう」
シュンジ「…い、イエス…プラス300デストゲージ…、有り難う御座います…」
大天使様「あぁ、そうだトーテンポー君、α計画がβ計画に変更したため、あの氷漬け大トカゲを返す事が出来なくなった。解ったかね?」
シュンジ「…つまり、これまでα計画の為にこの研究室で行ってきた事は…」
大天使様「まぁ、無意味だったといった所か、しかしまぁ、君が持ってきた氷漬け大トカゲは、本部の方でβ計画の為にこのまま使わせてもらう訳だしな」
シュンジ「人を馬鹿にすんのも、いい加減にしろっ!!」











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 シュンジが怒鳴ると、打ち切られたα計画に携わっていた研究員達が、一斉にシュンジを見た。
大天使様「ど、どーしたいきなりトーテンポー君?」
シュンジ「何が必要悪だ、いい加減なこと言いやがって!タカシにとって、あのペット達がどれほど大切か解ってんのか!氷漬けのトカゲだって皮膚を少し貰うだけ だったはずだ。それが何だβ計画?あのトカゲはタカシに返さなきゃなんねぇんだよ!!」
大天使様「…残念だな、色々な意味で残念だ」
シュンジ「何だと」
大天使様「トカゲはすでにβ計画の為に本部へ移された。それと、君には期待していたのだがねぇ」
シュンジ「残念だったな。それからトカゲは絶対に取り返す。それが俺ができるタカシへの償いだからだ」
大天使様「それはまた残念だ…」
シュンジ「…てめぇ、まさか…」
大天使様「それでは、サヨナラだトーテンポー君」
 大天使様、 いなくなる。
シュンジ「待て!…ちくしょう」
研究員 「君、先ほどの言葉、あれは本気で言っているのかい」
シュンジ「・・・?」
 この時、α計画が中止になり落ち込んでいた研究員達と、ブチギレて上司に暴言を吐き散らし出世の道を閉ざされたシュンジとの間に、何とも 言えない友情が芽生えた。 言葉ではない、【心】で彼等は会話した。

シュンジ『何としてでも、氷漬け大トカゲをタカシに返すんだ!!』
研究員達『オーケー、ボス!俺達の底力、デストゲイザーの奴等に思い知らせてやる!!』

 そしてここに、秘密結社デストゲイザーから分裂した独立組織、シュンジ・with・スーパードクターズ(仮)が結成された。主な活動内容は【絶対正義】である。ここを 読んで、また白けてしまった方、ここが頑張り所である!

 しかし、事態は急展開を見せる。それはシュンジ達が本部に突入する為の準備をしている時だった。
研究員 「ボス!た…、大変な事が起こりました…」
シュンジ「大変な事?一体どーした」
研究員 「本部…、敵本部が壊滅しました」
研究員達「っ!?」
シュンジ「…それは、どうゆう事だ?」
研究員 「き、巨大なトカゲが突如現れ…」
シュンジ「…、β計画は失敗だったようだな」
研究員達「ぼ、ボス…どうしますか?」
シュンジ「どーするもこーするも、誰かが奴等の尻拭いしなきゃなんねぇだろ」
研究員 「それは、つまり…」
シュンジ「まずはトカゲの専門家を呼ばないとな」
 なんと、秘密結社デストゲイザーは自らが造り出した、巨大トカゲ【コモラ(仮)】によって、数分の内に事実上、壊滅してしまったのであった。

 そんな大事件が起こる少し前、コユキはあることを確かめるため、普段は絶対に近付かない、あの場所に来ていた。
 モンスターハウス。
コユキ「…あの、こんにちは」
博士 「おやおや、これは珍しいお客さんであるな」
コユキ「ど、どうも…あの、私…」
博士 「タカシの事、であるな?」
コユキ「えっ、…」
博士 「君は前、上にある喫茶店でタカシに会い大騒ぎしていた娘であるな」
コユキ「…はい」
博士 「タカシとは、付き合っているのかね?」
コユキ「はい」
博士 「そーかい、ホッホッホ、あいつめなかなかやり手じゃないか、それで、何を訊きたいのかね?と、言っても爬虫類以外の事は全然得意ではないがの」
コユキ「…わたし、タカシのことは何でも知ってる気でいました、でも実際は全然知らないことばっかりだった…」
博士 「なるほどな、しかしタカシが爬虫類マニアであることを君に隠していたように、君もメイド喫茶で働いていた事は隠していたのであろう?」
コユキ「えっ…?」
博士 「あいつにその趣味は全くないからな、君も言いづらかったろう」
コユキ「はい…、それで私、あの時は気が動転しちゃて…タカシに嫌われちゃうってそればかりで…」
博士 「しかし、問題はそこではなかったであるな」
コユキ「…もっと、解り合おうとしなきゃいけなかったのに…もし、私がちゃんともっと自分の事を伝えてたら、タカシだって打ち明けてくれたかもしれなかったのに」
博士 「…まだ、間に合うはずであるよ」
コユキ「…?」
博士 「君がタカシの秘密を受け入れられるならば、全く問題は無いである」
コユキ「本当…ですか?」
博士 「タカシがどれほどお人好しで、優しくて、誠実か、君が一番良く知っているであろう」
コユキ「…はい」
博士 「きっと君はまだタカシの家を知らないだろうから、地図を差し上げよう」
コユキ「えっでも…」
博士 「タカシは今、とても危ない状態にあるはず。それこそ自殺しかねん。それから君に是非ともタカシに届けてほしいモノがあるのだよ」
コユキ「自殺!?そ、それって…」
博士 「いや、君の責任ではない、ただ少し前ウチに警察が来ての、ウチの店は危ない動物は置いてないから良かったんだが、どーやらその警察はタカシの所から ワシの店を知ったようなのでな」
コユキ「…、それで届けてほしいモノって?」
博士 「おぉそうだった、アイツめ買ったモノをそのまま忘れて帰りおって」
コユキ「…あの…ごめんなさい!実はわたしあなたを誤解していました」
博士 「ホッホッホ、いいのだよ、最近はOLの間で爬虫類が流行ってるとか言われておるが、トカゲの好きなお嬢さんなんて、実際は全然いないものだ」
コユキ「本当に…、ホントに有難うございました」
博士 「それで、実は君に届けてほしいモノなのだが、君の大嫌いなトカゲなのだよ…」
コユキ「大丈夫です、絶対にちゃんとタカシに手渡しますから!」

 そしてコユキは大嫌いなトカゲの籠を持ち、タカシの家へ向かった。ただ、タカシに会いたい一心で…。
博士「やれやれ、ずぅーっと目を付けていたのに、まさかタカシの彼女だったとはな…。フラれてしまったわい」












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 タカシ宅。
タカシ「…みんな居なくなったらこんなに静かになるんだな…。そーいえば、博士の所にもやっぱり警察は行ったのだろーか…、博士の店は悪いことしてない店だか ら大丈夫だよな…ブツブツ」
 タカシは、やはり相変わらず…とゆうか前にも増して危険な状態で引きこもっていた。そして…。
 ピンポーン!ピンポンピンポンピンポーン…!!
タカシ「…、いや、だけどやっぱりいきなり野生に放置したりはしないよな…うん、しないしない…ブツブツ」
 ピンポーン!ピン…ポーン!ピンポンピンポン…。ドンッドンドンッ!!
タカシ 「…、コユキちゃんは今どーしてるんだろ。もぅタカシという人間がいたことなど、覚えてないかな…ブツブツ」
シュンジ「サッサと開けろ!!」
 ドガンッ!! シュンジ、危険な道具で扉をこじ開ける。
タカシ 「…やぁ、シュンチャンじゃない…元気?」
シュンジ「いいか、理由はちゃんと後で話すが、とにかくお前の力が必要になった」
タカシ 「…ははは、任せてよ。今なら俺、空だって飛べる気がするんだ」
シュンジ「よし、全員でタカシを連れて行くぞ。あと念のため拘束衣が必要だな」
部 下 「オーケー、ボス!!」
タカシ 「…、あれれ?これじゃあ手足が全然うまく動かないや、蛇はいつもこんな感じなのかなぁ?」

 30分後、地下研究所。
部 下 「ボス、お帰りなさいませ」
シュンジ「コモラは現在どこにいる?」
部 下 「コモラは現在、とうとう人里に降りてきました!マスコミも殺到しているようですが、町住民の避難はどうにか間に合ったようです」
タカシ 「コモラ?…そーいえば似てる名前でちょっと前にコモド大トカゲのコモ太ってのを飼ってたんだけど、死んじゃってさぁー」
部 下 「…、ボス本当にこんな奴、必要なんですか?」
シュンジ「…タカシ」
タカシ 「ん?どーしたのシュンチャン」
シュンジ「いいかタカシ良く聞け、そのお前が言ってるコモ太だが、ハッキリ言ってあの巨大トカゲだ!」
 シュンジ、テレビに映っている大きなビル位の大きさはあるであろうコモラを指差す。
タカシ 「…へ?」
シュンジ「訳あってコモ太はお前の家から持ち出され、持ち運びに邪魔だったため尻尾を切られ、解凍され、悪い奴の実験でモンスターにされてしまったんだ!」
部 下 「…」
タカシ 「…そんな、あれがコモ太…?」
 テレビ中継。
アナウンサー「一体この巨大な怪獣はどこから現れたのでしょうか、今も怪獣は木々や建物をなぎ倒しつつ、ほぼ一直線に進んでいる模様です、現場からは以上 です、スタジオにお返しします」
 スタジオ。
司会「はい、それではまた新しい情報が入り次第すぐ教えてください。えぇ〜なお、怪獣の発見が早かったのと、行動の予測がしやすかった為、地域住民の避難 は済んでおりますが、各ご家庭での警戒を怠らないようお願いします」
ゲスト「いやぁ、それにしても最近の異常気象に…」
 地下研究所。
タカシ 「な、なんでだよ!!コモ太は今まで一度だって人を傷つけたことなんかないのに…」
シュンジ「…いいか、あれはコモ太を材料にしてはいるが、あくまで大怪獣コモラなんだ、誰かがあれを止めるしかない、つまり…」
タカシ 「殺すしか…ないって事?」
シュンジ「…タカシ」
タカシ 「他のどんな爬虫類が悪者扱いされても、コモ太だけは絶対許せない」
シュンジ「…お前の気持ちはよく解った。とりあえず、この書類にサインしてくれ」
タカシ 「へ?な、なにこの紙…」
シュンジ「いや、何でもないから、別に読むほどの内容じゃ…」
タカシ 「えぇ〜っとなになに、私はα計画実行のためにドナーとして身体を提供します…?」
シュンジ「…」
タカシ 「ち、ちょっとぉ!!これってヤバい事だよね!?シュンチャンってばマジ冗談キツイって…」
シュンジ「いいか、あのコモラを止める方法、それはもうα計画しかないんだ。それに幸いなことにα計画を進めていた のはこの研究所で働いていたこの研究員達だ」
タカシ 「…α計画って、どんなんなの?」
シュンジ「動物の遺伝子と人間の遺伝子をうまく組み合わせる事によって、人間の知能と動物が持つ並み外れた身体能力と野生の勘を合わせ持った超人を作り上げる実験だ」
タカシ 「…野生の勘?…ってか、動物を巨大化させる実験よりもある意味危ないのでは…」
シュンジ「それで、まぁどーせなら爬虫類を知り尽くしたお前がいいかなぁってよ、だけど実際ん所、お前がそこまでする必要もないもんな…。今のは無しにしてくれ」
タカシ 「…いや、サインするよ俺…」
シュンジ「はぁっ!?お前今、自分が何て言ったか解ってんのか!!これにサインしたら人間じゃなくなっちまうんだぞ!」
タカシ 「うん、コユキちゃんにまた嫌われちゃうね。だけど俺以外の人だったら、きっと気分悪いでしょ…。基本的に俺はどんな動物も好きだしさ。それに俺以 外コモ太を生かそうとは考えないでしょ?」
シュンジ「…タカシ、…実験は何がなんでも成功させてやる、安心して手術されてくれ!コモラ…コモ太を助けれるのはお前だけだ!」
部 下 「あの、それでボス、掛け合わせる動物はどうしましょうか?」
タカシ 「あっそーか、俺以外にもう一匹、他の動物が必要だもんな」
部 下 「なんでしたら、その辺のペットショップから買ってきましょうか?」
シュンジ「…」
タカシ 「…それってかなり弱そうだね」
部 下 「強い動物が必要なのに、賢い動物使ってもって感じですよね」
シュンジ「問題ナーシ!!そんな事もあろうかと、尻尾だけ別に切っておいた!」
部 下 「…さっきは邪魔だったとか言っていた気が…?」
タカシ 「…それでデッカくなったコモ太には尻尾がないのか」
 かくして、α計画は実行に移された。最強の爬虫類を使い造られた巨大怪獣と、その尻尾と引きこもり爬虫類オタクを材料に造られた 人造人間。結果はかなり残念なことになりそうな気もするが、そこはやはり膨大な奇跡と愛と友情で何とかなる…と、とても良い気がする。












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 その頃コユキはというと、みんな避難して誰もいなくなった町で一人、巨大トカゲが出現したとも知らずにタカシの家を探していた。
コユキ「この時間で人も車も見当たらないなんて…困ったなぁ…」
 むしろ、道に迷っていた。

 そして二時間後、驚異的スピードで行われたタカシの手術は無事終了した。
 地下研究所。
シュンジ「タカシ大丈夫か?」
タカシ 「うん、麻酔も切れたし全然大丈夫、ってか変わった気がしないんだけど…」
シュンジ「あぁ、普段は少しだけトカゲっぽい匂いがするだけで、普通の人間の姿でいられる」
タカシ 「えぇっ!?俺いまトカゲの匂いするんだ…」
シュンジ「つっても、おめぇは普段から嫌なニオイしてたから変わんねえな」
タカシ 「…シュンチャンもっと優しい言葉の一つくらいくれたって…」
シュンジ「このイヤホンを耳にかけてボタンを押せ」
タカシ 「えっ…、うん分った」
 タカシ、イヤホンのボタンを押す。
タカシ 「うぅっ…うわあぁー!!」
 タカシの全身は瞬く間に硬いウロコに被われ、着ていた服が破れるほど筋肉が盛り上がった。あと、それから尻尾が生えた!
タカシ 「フーッフーッ…」
シュンジ「タカシ!大丈夫か、ちゃんと俺が解るか!?」
タカシ 「…、あ〜うん、結構平気かも」
部下達 「せ、成功したぞー!!」
シュンジ「良かった…、この装置はイヤホンから特別な音を流して自由に変身できるようにする装置だ。っつー訳でこれからタカシ、おめぇをコモ太の近くまで 運んでやる。それからどぅするかはお前次第だ」
タカシ 「うん、ありがとシュンチャン」
シュンジ「後、ネーミングなんだけど…」
タカシ 「ねぇみんぐぅ?」
シュンジ「いいか、一度しか言わないからな、俺がボスでお前はコモドマンだ!」
タカシ 「…コモドマン?」
部下達 「…コモドマン?」
シュンジ「わかったらすぐ出発するぞ!」
タカシ 「えっあ、はーい」
 かくしてタカシは改造され、人造人間コモドマンとなった。いきなりヒーロー物になるのもアレと言えばアレな感じもするが、なってしまったモノは仕様がない、 ここまで頑張って読み進めた皆さんも、そろそろ腹を括る時であろう。

 車内。
タカシ 「ち、ちょっとシュンチャ…ボス、車のスピード上げすぎじゃない?ねぇってば!」
シュンジ「コモ太は町に降りてからもう、かなりの時間が経ってる、自衛隊もそろそろ攻撃に入るはずだ…」
タカシ 「あ〜それなんだけど多分、大丈夫だと思うんだよね」
シュンジ「何言ってんだ、あんな巨大怪獣が街中暴れ回ってんだぞ!」
タカシ 「確かにコモド大トカゲは昔、恐竜に間違われたらしいけど、多分みんな突然変異の大トカゲだと思ってるよ」
シュンジ「そうだとしたって攻撃は始まるだろ!?」
タカシ 「突然変異だと考えた日本の偉い人たちは、まずどのトカゲの突然変異種か調べるでしょきっと」
シュンジ「そっか、いくら怪獣でも、コモド大トカゲを殺したりはなかなかできないのか…」
タカシ 「おぉっ!シュンチャン知ってんね、天然記念物のコモ太を殺したら、俺も全世界も日本を許さないって事」
シュンジ「タカシおめぇやっぱ、改造したから冴えてんなあ」
タカシ 「改造…、なぁ後コモ太はほぼ一直線に進んでるんだよね?」
シュンジ「ああ、そうだ、それがどーかしたか?」
タカシ 「このカーナビ、もっと広範囲に広げて良い?」
シュンジ「ん?あぁ、別に見てないしな」
タカシ 「…やっぱりだ、シュンチャン分ったよコモ太の行き先!!」
シュンジ「なにぃっ!?…ってか行き先なんか存在すんのか?」
タカシ 「俺んちだよ!コモ太は家に帰ろうとしてんだ!!」
シュンジ「…帰省本能ってヤツか?」
タカシ 「う〜んコモド大トカゲに帰省本能なんて無い気もすんだけど…こんな時、博士がいてくれたらなぁ」
シュンジ「…とにかく、コモ太がお前の家に向かってるのは間違いないんだな?」
タカシ 「た、多分…」
シュンジ「んじゃあ、そっちに向かうぞ」
タカシ 「えっいや、多分だからね!勘だよ勘っ!!」
シュンジ「大丈夫、今のお前は勘も鋭い…はずだ」
 確かに改造され、冴え渡ったタカシの言う通りコモ太の進む直線上にタカシの家が存在した。しかも、そこにはやっとタカシの家を発見したコユキの姿があった。

 タカシ宅。
コユキ「…出掛けてるのかな?」
 けなげというか抜けすぎというか…、こともあろうにコユキはタカシの帰りを待つ気マンマンであった。

 とある街角。
シュンジ「…本当に大丈夫か?お前、ちゃんと解ってるか知らんけど、命だって危ないんだからな」
タカシ 「大丈夫だよ。コモ太は判ってくれる、ずっと一緒だったんだからね」
シュンジ「ずっと?」
タカシ 「コモド大トカゲはだいたい百年くらい生きるんだよ。コモ太は最初、俺のお爺ちゃんが飼ってたんだ。でも爺ちゃん八十過ぎてボケちゃってさぁ、他に 飼える人もいなくて、俺が引き継いだってわけ」
シュンジ「つまり、コモ太は俺達より年上な訳だ」
タカシ 「あっ、…そーいえばそーなるね」
シュンジ「それはまぁ良いんだけどさ、降ろす場所ってホントにここでいいんだな?」
タカシ 「う〜ん、多分ここを通るはずなんだけど…あっ!」
シュンジ「どーした!?何か感じたか?」
タカシ 「あ〜いや、そーいえばコユキちゃんと、よくこの辺来たなぁって」
シュンジ「…んだ、そりゃあ」
タカシ 「…そっか、あの時…ハハッ、アハハハハ!!」
シュンジ「今度は何だよ!?」
タカシ 「ご、ゴメン、ちょっと昔のことを思い出してさ」
シュンジ「彼女との思い出?」
タカシ 「うん、だけどあんまり良い思い出じゃないかも、…多分コユキちゃんは何度も秘密を明かそうとしてたのかもしんない…俺みたいに」
シュンジ「…はぁ」
タカシ 「でもきっと俺が言い難くさせちゃったんだよね」
シュンジ「…ごめんタカシ、話しが全然わかんねぇ」
タカシ 「えっ、いやごめん、こっちのことだから気にしないで」
 カタッ…カタカタカタ…。
タカシ 「っ!?」
シュンジ「…来たぞ」
 その時、微かに地面が揺れはじめ、建物が崩れる音とともにコモ太が遂にその巨大な身体を現した。
コモ太 「ガル、ガルルル…
タカシ・シュンジ「…、でかっ!!」
タカシ 「デカいでかいとは思ってたけど、やっぱ実物はそーとーデカイね!!」
シュンジ「ああ、あのデカさはある意味反則だな」
タカシ 「あのさぁ…、思ったんだけどコモ太あんなデッカくなっちゃって、俺の事なんて気付くのかなぁ?」
シュンジ「…今さら弱音か?」
タカシ 「えっいや、…まぁ」
シュンジ「ここからはタカシ…いや、コモドマンお前の仕事だ!」
タカシ 「シュンチャンそれって、危険を押し付けてない!?」
シュンジ「さっきも言ったように、悔しいが俺に出来るのはここまでだ、つー訳でグッジョブ、コモドマン!!」
タカシ 「えぇ〜、ぐ、グッジョブって…良い職業って何さ!!あぁっちょっとーっ!?」
 ブウゥーン…。シュンジ、車で颯爽と走り去る。
タカシ「…行ってしまった」
コモ太「ゴルルルル」
タカシ「…コモ太も何でそんな体になっちゃうかなぁ。…よし!」
 タカシは覚悟を決め、コモドマンに変身した!
コモドマン「うおおおおっ!!」
 コモドマンはもの凄い速さでコモ太に突進した!
 ビシッ!…。
コモドマン「どわあぁぁー!」
 やはりコモドマンはコモ太に当たり負けし、遠くの方へ飛んでいった…。
コモ太「ゴル…?」
 しかもコモ太には全くダメージがなかった。












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 コモ太から、100メートルほど離れた民家。
 ドンガラガッシャーン!
コモドマン「…こ、こんなに飛んで無傷とは」
 コモドマン本人が驚くのも無理はない、なんとコモドマンは100メートル飛ばされた挙げ句、民家の屋根を突き破り地面に激突したにも関わらず、全くの無傷であった。
コモドマン「す、凄い身体なんだなやっぱ…ん?」
お爺さん「ば、バーサンやぁい、タロウが…孫のタロウが帰って来たぁよー!」
コモドマン「へ?」
 ガラガラガラ…!お婆さん登場。
お婆さん「ジーサンやぁタロウは孫じゃなくて、昔飼ってた犬じゃろぅが、おや?…でもタロウにそっくりじゃなぁ」
コモドマン「…どーもです」
 コモドマンは、心優しいお年寄りから、お茶とせんべいを頂いた!

コモドマン「うおおおっ!」
 老夫婦に別れを告げ、再びコモドマンはコモ太に突撃した!
 ビシッ!!…。
コモドマン「どわあぁぁー!!」
 …芸がないと言うか、脳みそを使わないと言うか…、再びコモドマンは遥か彼方へ飛ばされていった。

 コモ太から50メートル離れたマンション。
兄貴「へっへっへ、正に稼ぎ時だなぁサブ!」
サブ「兄貴ぃ、もうたまんないっすね!!おっこの時計もーらい」
 ガシャーン!!
兄貴・サブ「っ!?」
コモドマン「どわわわわっ!」
 ゴロゴロゴロゴロ…。
コモドマン「あぁーもう!こんなんじゃあ永久にコモ太なんか捕まんねーや…ん?」
兄貴「…なんじゃあコイツ?」
サブ「同業者じゃなさそうですけどね…コスプレでしょーかね?」
兄貴「こす…何だ?」
サブ「何だって…コスプレですよ、兄貴?」
兄貴「あ、あー!はいはい思い出したアレだろ!?」
サブ「…」
兄貴「かね…金と時間のかかる…プレだろ?」
サブ「…は?」
コモドマン「…」
 ビシッ!バキッ!ドカーン!!
コモドマン「…、なんだか飛ばされる度に無駄な時間を作ってるよーな…でもまぁ今回はしょうがないよな」
兄貴・サブ「ちくしょう、離せー!」
 こうして我等がコモドマンはまた一つ、泥棒の驚異から民間人を救った!しかし、あの部屋に飾ってあった日本刀やら【仁義】と書かれた掛軸は何だったのだ ろうか…?と、いうか部屋よりむしろ事務所みたいな所であったよーな…。
 そんな事はどーでも良い!あの二人組はあんだけガムテープで巻いてしまえば大丈夫だろう。後は警察がどーにかしてくれる。

コモドマン「どりゃあー!」
 こうして、またコモドマンはコモ太に向かって行った。
コモドマン「…もう少しで俺ん家だ。ってゆーかコモ太は巨大化したって言ったって、なんだってあんな持久力あるんだ?」
 そうなのである、野生のコモド大トカゲは普段、全く動かずにただじっと静止して過ごす。肉食ではあるが、余り狩りはせずに死肉ばかりを食べ、繁殖期には他 の雄と雌の奪い合い(コンバット・ダンス)をするが、それも相撲の一試合くらいの長さである。
 確かにコモド大トカゲは力も強いし巨大である。何気に泳ぐこともでき、若く小柄な内は木にだって登る。その反面、本当にこれでもかと言うくらいに動かない。 というか、コモド大トカゲの100年というずば抜けた寿命は、無駄な体力を一切使わないからなのだ!人間は長生きの秘訣に【運動】を上げるが、コモド大トカ ゲにしてみれば【無理しない】事なのである。しかし、コモ太は一度生涯を全うした身体でありながら、凄まじい距離を走り続けている。人間と掛け合わせたコ モドマンにしたって日頃の運動不足が祟りピークが近いのだ。コモ太は一体どれほどの負担を感じているのだろうか…。
 という説明で今一ピンと来なかった方、つまり平たく言えば、いくら巨大化しようとコモ太が長距離を走るのは有り得ない、という事である。

 その頃、まさか自分が命の危険に晒されようとは、知るよしもないコユキは…。
コユキ「こっちは静かなのに、向こうは何だか賑やかだねぇ、お祭りでもやってるのかな?」
 勘違いな独り言を呟きながら、タカシを待っていた。そして…。
 ドガァン!!ガラガラガラガラ…!
コユキ「きゃあ!?」
コモ太「ガルルル!」
 コモ太は遂にタカシ宅に到着してしまったのであった。
コユキ  「な、何…これぇ…」
コモドマン「コモ太ー待てぇー…ん?こ…コユキちゃん!?…な、何で…?」
コモ太  「ガルルル!」
コモドマン「あ、危ないって!コユキちゃん離れて!!」
コユキ  「た、助け…誰か…」
 きっと、この状況になったら誰もがそうなるだろう、コユキは見事に腰を抜かしていた。
コモ太  「ガルガルルルー!」
コモドマン「うおおぉー!!」
 コユキを助けようと、必死に走るコモドマン!
コモ太「ガルルル!」
 一向に速度を弱めずにタカシの家に突進するコモ太!
コユキ「きゃあーっ!!」
 唯でさえ大嫌いな爬虫類が二匹も、しかも見たことも無い化け物と化しハイスピードで近付いて来た為、もはや気絶寸前のコユキ!
コモドマン「コユキちゃーん!!」
 …
 …
 …。

コモドマン「…コユキちゃん…大丈夫?」
コユキ  「…」
 コモドマンは危機一髪の所で、見事コユキを助けた!んが…。
コモドマン「コユキちゃん?」
 コユキは見事に気絶していた。そしてコモ太は…。
コモ太  「グルル…」
コモドマン「…コモ太ぁ」
 コモ太はタカシの家ギリギリの所でピタリと止まっていた。その姿はタカシの部屋を窓から覗いているようであった。
コモドマン「コモ太、やっぱり俺のこと、忘れてなんかなかったんだね!お帰りコモ太!!」
 ドンガラガッシャーン…!!
コモドマン「…へ?」
コモ太  「ガルルルル!!」
 皆の期待と感動を裏切り、コモ太はタカシの家をめちゃくちゃに踏み倒すと、尚もそのまま直進を続けた。
コモドマン「ち、ちょっとコモ太ぁー!って、そーだコユキちゃん、大丈夫?あぁもう、こーゆーのは確か日陰で寝かせておけば…それは日射病か?うおぉどーすれば…!!」
 キキーッ!!シュンジ、車で登場。
シュンジ 「タカ…コモドマン大丈夫か!?」
コモドマン「シュンチ…ボス!うん、俺は大丈夫だよ」
シュンジ 「…っておめぇは何やってんだ!早くコモ太を追え!」
コモドマン「シュンチャンほんとに良いとこに来てくれた、コユキちゃんをお願い!んじゃ急ぐから、じゃーね」
 コモドマンそそくさと走り去る。
シュンジ「コユキちゃんって…これがお前の彼女か!ってかおいお願いって…はやっ!」
 コモ太が向かっている場所はタカシの家ではなかった。では果たしてコモ太は何処へ向かっているのか?
 それは…。

 遥か山奥の民家。
コモ太  「クルル…」
コモドマン「ハァハァ…、やっと止まった…、ってここは!」
爺ちゃん 「おんやまぁコモ太ぁ〜またエラく太ったのぉ」
コモ太  「クルル」
コモドマン「じ、爺ちゃん!?」
爺ちゃん 「おータカシじゃあないか、どーした顔色悪いぞぇ?」
コモドマン「何で解んのさ…」
爺ちゃん 「いんやぁ今日は良い日じゃなぁ〜、ほぇっほぇっほぇっ」
コモ太  「クルルル…」
 コモ太はタカシの家ではなく、タカシの祖父の家に向かっていたのだった。
 考えてみれば、コモ太にとって生涯の半分以上は祖父の家で暮らした訳で、それに比べればタカシと暮らした期間など短いものであった。
 その後、コモ太は祖父の家に着いてすぐに死んでしまった、もちろん疲労もあるのだろうが、おそらく実験自体に無理があったのだろう。むしろ、これだけ保 った事が奇跡だ、そんな巨体を地上で支える生き物など存在しないのだから…。
 タカシはというと、何だか少し悲しかったり悔しかったりしたが、それ以上にコモ太が祖父を忘れなかった事に感動した。












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 それから数ヶ月が過ぎ、その間タカシの生活は当たり前だが一変した。気が付けばシュンジの組織の一員にされ、研究所で実験されたり、メンテナンスを受けた り、闇に紛れて悪者退治をしたりして、色々な意味でひっそり暮らしていた。もちろんコユキとも会わなくなった。
 そんなある日、タカシ宅。
スーツ男「君がヤマシタ・タカシ君だね?」
タカシ 「は、はぁ」
スーツ男「少しだけいいですか?」
タカシ 「いや、あの、あれ以来うちは何にも飼ってないですから!」
スーツ男「…あぁ、すみません、私はこーゆう者です」
 タカシ、名刺を受け取る。
タカシ 「…れ、れじゃあ…」
スーツ男「うちの会社は、レジャー施設を運営する仕事をしてます」
タカシ 「…はぁ」
スーツ男「今度、私共の造った動物園がオープンするんですが、その事でお話がありまして」
タカシ 「…はぁ」
スーツ男「ヤマシタ君、君が前に飼っていたペット達なんだけどね、それ全部こちらで引き取る事になったんですよ」
タカシ 「えぇっ!?…そっか、あーゆう場合そーなるもんなのか」
スーツ男「それで…」
タカシ 「それじゃあ動物園がオープンしたら、いつでも行けば会えるんですね!」
スーツ男「あ〜いや、それで…」
タカシ 「あいつら元気してますか!?」
スーツ男「ヤマシタ君、その動物園の飼育係として働かないかい?」
タカシ 「…へ?」
 こうして、タカシは飼育係として合法的に爬虫類を飼う事ができるようになった。
 動物園がオープンすると、木よりも座布団の上が好きなニシキヘビや、缶に入り蓋まで閉めるエリマキトカゲなど、ユニークな爬虫類ブースは話題を集め、二 本足で立つレッサーパンダばりの人気となった。もちろんTVや雑誌にも載り、タカシ自身もピースなんかをして何枚か使われた。
 そして…。

 コユキ宅。
コユキ「トカシ!まーた雑誌をめちゃくちゃにしてぇ〜」
トカシ「くるるる」
 結局タカシに渡す事ができなかったバジリスクを、コユキは悩みに悩んだ末、自分で飼う事にした。今まで爬虫類を飼った経験のない人がバジリスクを飼うのは 結構大変である。簡単か難しいかで言ったら難しい方である。しかもコユキはご存知の通り動物嫌いである。それでもコユキが自分で飼おうと決めたのは、やは りタカシとの繋がりが欲しかったからだろう。しかし飼ってしまえばホンノリ可愛いバジリスク、今では手作りの服を着せて上着のポケットに入れ、一緒にお出 かけしたりまでするようになった。因みにトカシという名前は勿論タカシとトカゲを合わせて付けた名前である。
トカシ「くるるっくるる!」
コユキ「あ〜もぅ、またぁ、なーに?どーしたのトカシ…」
トカシ「くるっくるる!」
コユキ「…タカシ」
 トカシが散らかした雑誌には、タカシが首に大きな蛇を巻き付け照れ笑いをしている写真が載っていた。
コユキ「…」
トカシ「くる?」
コユキ「トカシ、動物園いこーか!?」
トカシ「くる!」
 コユキはきっと、トカシがくれた奇跡と思ったのだろう…が、そんな都合の良い展開にイラっときた方は、ただの偶然だったと思ってもらいたい。むしろ開き 直ってしまえば、超偶然である!トカシが雑誌を荒らすのは日常茶飯事な訳で、タカシだって今や、時の人である。そうするとトカシが散らかした雑誌の記事が 、たまたまタカシの記事だっただけな気もしてくる。…でも、夢はあった方が、無いよりかは絶対良いよね!

 翌日、動物園【アニマルーン5】
園内放送「只今、ワニの餌の時間となりました。どうぞ皆様ワニの庭にお集まり下さいませ」
 爬虫類ブース【ワニの庭】
少年 「すっげー!マジちょーすっげー!ワニだよあれ、ワニだワニだ!!」
少女 「ねースゴイねー、こっから落ちたら、きっと餌食になっちゃうんだろーねー」
少年 「…う、うん…そだね」
爺さん「ば、婆さんや、タロウがタロウがおるぞぉ」
婆さん「なーに言ってるんですか爺さんやぁ、タロウはワニじゃなくて犬、いーぬですよぉ、でもあれまぁタロウにそっくり」
アニキ「サブ見てみい、あれがワニだわに!」
サブ 「…そーっすね」
アニキ「なんだぁーサブ、やけに元気ねぇんじゃねーの?」
サブ 「なにが楽しくて野郎二人で動物園なんかいるんすか…」
博士 「フォッフォッフォッ、タカシめやっておるのー」
アミ 「すごーい、超いっぱいいるよ!気分はもうストーン・オーシャン(ジョジョの奇妙な冒険・第六章に出てくるワニの沢山いる刑務所)だね!」
彼氏 「いや、良くわかんねぇ」
タカシ「ワニ助、お前はホント人気者だなぁ」
ワニ助「ガー!」
タカシ「はーい、それでは皆さん今からワニ助の餌付けをしまー…」
 その時。
女の声「ちょっトカシ!」
タカシ「ん?…んがっ!?」
 タカシの顔面にザラッとしてて、ブニュッと柔らかい何かが降ってきた。
タカシ「…なんでこんな所にバジリスクなんかいるんだ?」
トカシ「くるるる」
ワニ助「ガー」
タカシ「あっワニ助これは餌じゃないよ〜」
コユキ「トカシっ!!…あ」
タカシ「ん?…あ」
トカシ「くる?」
 こうして二人は再会した。タカシとコユキはお互いを完全に理解したとは言えないかもしれない。しかしきっと今の二人なら分かり合おうとするだろう。 お互いの秘密を素直に打ち明け、それから良い解決策を探していくのだろう。

 数ヶ月後、地下研究所。
シュンジ「へぇ〜、そりゃ多分お前の体臭がトカゲ臭かったから、仲間だと思って飛びついたんだろ」
タカシ 「シュンチャン…夢が無い上に傷付く言い方しないでよ…」
シュンジ「それで、彼女とは今一緒に住んでんだ?」
タカシ 「うん」
シュンジ「…お前ってさ、本当にもぅ彼女のペット以外に家じゃ爬虫類飼ってないの?」
タカシ 「フッフッフッ、俺の屋根裏はまさにパラダイスだよ!!」
シュンジ「…」





―END―





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