それから数ヶ月が過ぎ、その間タカシの生活は当たり前だが一変した。気が付けばシュンジの組織の一員にされ、研究所で実験されたり、メンテナンスを受けた
り、闇に紛れて悪者退治をしたりして、色々な意味でひっそり暮らしていた。もちろんコユキとも会わなくなった。
そんなある日、タカシ宅。
スーツ男「君がヤマシタ・タカシ君だね?」
タカシ 「は、はぁ」
スーツ男「少しだけいいですか?」
タカシ 「いや、あの、あれ以来うちは何にも飼ってないですから!」
スーツ男「…あぁ、すみません、私はこーゆう者です」
タカシ、名刺を受け取る。
タカシ 「…れ、れじゃあ…」
スーツ男「うちの会社は、レジャー施設を運営する仕事をしてます」
タカシ 「…はぁ」
スーツ男「今度、私共の造った動物園がオープンするんですが、その事でお話がありまして」
タカシ 「…はぁ」
スーツ男「ヤマシタ君、君が前に飼っていたペット達なんだけどね、それ全部こちらで引き取る事になったんですよ」
タカシ 「えぇっ!?…そっか、あーゆう場合そーなるもんなのか」
スーツ男「それで…」
タカシ 「それじゃあ動物園がオープンしたら、いつでも行けば会えるんですね!」
スーツ男「あ〜いや、それで…」
タカシ 「あいつら元気してますか!?」
スーツ男「ヤマシタ君、その動物園の飼育係として働かないかい?」
タカシ 「…へ?」
こうして、タカシは飼育係として合法的に爬虫類を飼う事ができるようになった。
動物園がオープンすると、木よりも座布団の上が好きなニシキヘビや、缶に入り蓋まで閉めるエリマキトカゲなど、ユニークな爬虫類ブースは話題を集め、二
本足で立つレッサーパンダばりの人気となった。もちろんTVや雑誌にも載り、タカシ自身もピースなんかをして何枚か使われた。
そして…。
コユキ宅。
コユキ「トカシ!まーた雑誌をめちゃくちゃにしてぇ〜」
トカシ「くるるる」
結局タカシに渡す事ができなかったバジリスクを、コユキは悩みに悩んだ末、自分で飼う事にした。今まで爬虫類を飼った経験のない人がバジリスクを飼うのは
結構大変である。簡単か難しいかで言ったら難しい方である。しかもコユキはご存知の通り動物嫌いである。それでもコユキが自分で飼おうと決めたのは、やは
りタカシとの繋がりが欲しかったからだろう。しかし飼ってしまえばホンノリ可愛いバジリスク、今では手作りの服を着せて上着のポケットに入れ、一緒にお出
かけしたりまでするようになった。因みにトカシという名前は勿論タカシとトカゲを合わせて付けた名前である。
トカシ「くるるっくるる!」
コユキ「あ〜もぅ、またぁ、なーに?どーしたのトカシ…」
トカシ「くるっくるる!」
コユキ「…タカシ」
トカシが散らかした雑誌には、タカシが首に大きな蛇を巻き付け照れ笑いをしている写真が載っていた。
コユキ「…」
トカシ「くる?」
コユキ「トカシ、動物園いこーか!?」
トカシ「くる!」
コユキはきっと、トカシがくれた奇跡と思ったのだろう…が、そんな都合の良い展開にイラっときた方は、ただの偶然だったと思ってもらいたい。むしろ開き
直ってしまえば、超偶然である!トカシが雑誌を荒らすのは日常茶飯事な訳で、タカシだって今や、時の人である。そうするとトカシが散らかした雑誌の記事が
、たまたまタカシの記事だっただけな気もしてくる。…でも、夢はあった方が、無いよりかは絶対良いよね!
翌日、動物園【アニマルーン5】
園内放送「只今、ワニの餌の時間となりました。どうぞ皆様ワニの庭にお集まり下さいませ」
爬虫類ブース【ワニの庭】
少年 「すっげー!マジちょーすっげー!ワニだよあれ、ワニだワニだ!!」
少女 「ねースゴイねー、こっから落ちたら、きっと餌食になっちゃうんだろーねー」
少年 「…う、うん…そだね」
爺さん「ば、婆さんや、タロウがタロウがおるぞぉ」
婆さん「なーに言ってるんですか爺さんやぁ、タロウはワニじゃなくて犬、いーぬですよぉ、でもあれまぁタロウにそっくり」
アニキ「サブ見てみい、あれがワニだわに!」
サブ 「…そーっすね」
アニキ「なんだぁーサブ、やけに元気ねぇんじゃねーの?」
サブ 「なにが楽しくて野郎二人で動物園なんかいるんすか…」
博士 「フォッフォッフォッ、タカシめやっておるのー」
アミ 「すごーい、超いっぱいいるよ!気分はもうストーン・オーシャン(ジョジョの奇妙な冒険・第六章に出てくるワニの沢山いる刑務所)だね!」
彼氏 「いや、良くわかんねぇ」
タカシ「ワニ助、お前はホント人気者だなぁ」
ワニ助「ガー!」
タカシ「はーい、それでは皆さん今からワニ助の餌付けをしまー…」
その時。
女の声「ちょっトカシ!」
タカシ「ん?…んがっ!?」
タカシの顔面にザラッとしてて、ブニュッと柔らかい何かが降ってきた。
タカシ「…なんでこんな所にバジリスクなんかいるんだ?」
トカシ「くるるる」
ワニ助「ガー」
タカシ「あっワニ助これは餌じゃないよ〜」
コユキ「トカシっ!!…あ」
タカシ「ん?…あ」
トカシ「くる?」
こうして二人は再会した。タカシとコユキはお互いを完全に理解したとは言えないかもしれない。しかしきっと今の二人なら分かり合おうとするだろう。
お互いの秘密を素直に打ち明け、それから良い解決策を探していくのだろう。
数ヶ月後、地下研究所。
シュンジ「へぇ〜、そりゃ多分お前の体臭がトカゲ臭かったから、仲間だと思って飛びついたんだろ」
タカシ 「シュンチャン…夢が無い上に傷付く言い方しないでよ…」
シュンジ「それで、彼女とは今一緒に住んでんだ?」
タカシ 「うん」
シュンジ「…お前ってさ、本当にもぅ彼女のペット以外に家じゃ爬虫類飼ってないの?」
タカシ 「フッフッフッ、俺の屋根裏はまさにパラダイスだよ!!」
シュンジ「…」
―END―