その大空に中指を


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 アタシのこの物語をどう始めるべきか…?映画だって出だしと最後が肝心なんだし、これってけっこう重要だと思う。
 う〜ん…
 壮絶な半生…あ〜いや、何もないか。
 悲しい父との別れ…まぁ単身赴任だけどね。
 大恋愛…元カレに三万貸した次の日に国外に逃げられたのはビビったな。どーせ日本円つかえねぇだろ!返せ!!って言ってやりたかった。あの後、警察が来たし…。
 辛い闘病生活…そんなん生理で一杯いっぱいだよ。それに基本アタシ身体じょうぶだし!30キロの車に跳ねられて無傷だったかんね。正にアンブレイカブルでしょ。
 小学生の時のイジメ…これはホント、あれは酷かった。たぶん聞いたら皆引くと思うよ。…だから、そこから話そう。

 あれは小学五年生の時だ。
担任 「今日、エナカさんのランドセルが焼却炉で…」
男子A「マジで!ほんとに同キャラで対戦できんの!?」
担任 「幸いランドセル自体は燃え…」
男子B「おぅしかもベガとかも使えんだぜ!」
担任 「先生は一体だれがやったのかを知りたい…」
男子A「うっそ、ラスボじゃんよ!」
男子C「霊ガァーーン!!」
男子B「バカそれはユウハクだっての」
担任 「…」
 担任の深刻な話なんて、小五の男子のゲーム話しに敵うはずがない。
 いちおう説明しておくけど、担任が言いたがってたことはこうだ。学年一のいじめられっ子のランドセルがある日、教室のゴミ箱に捨てられ、焼却炉で燃やされ かけた。もちろんランドセルを発見した業務員のオッサンは速攻で校長に報告。一方そのころ、校門前で生徒に向かって「さよなら〜」と言っている人気教師が、 ある生徒を発見した。…手ぶらでベソかきながら下校する学校一のいじめられっ子だ。
 校長にまで知られ、学校問題になってしまった担任は、ブチギレ寸前だった。しかし、その担任の怒りの矛先は、無情にも被害者に向けられることとなった。

 面談室
担任 「なぁエナカ、お前はクラスでイジメにあってんのか?」
エナカ「…」
担任 「言い出せないのはわかるけど、このままじゃあ何にも変わらないんだぞ」
エナカ「…」
担任 「それは、お前だってわかってるだろ」
エナカ「…」
担任 「…なぁ」
エナカ「…」
担任 「…」
 …
 …
 …
 …
 …ぷちっ…。
 その、実際には絶対に鳴らない音。しかし、この時は確かに聞こえた。この小さく儚い渇いた音は、強烈な印象を刻みつけ教室中に響いた。
担任 「テメェは俺をナメてんのかぁー!!」
エナカ「っ…!?」
担任 「テメェ自身がそんな、いっつもグヂグヂジメジメしてっから、イジメられんだよ!解るか!?なぁ?解んなら何でイジメられんだよ!解ってねぇからイジメ られんだろ!!」
エナカ「…ぅぅ」
担任 「おっ、何だ?泣くのか?クソッタレ!最近のクソガキ共は泣けば済むと思ってやがる、昔はなぁ…」
 いつの間にやら担任は日本の歴史について語りだした。担任の語る日本の歴史はひたすら続き、二十分後には安土桃山時代にまで遡った。
担任 「そこで秀吉はだなぁ…!」
エナカ「…」

 面談室前の廊下
女子「あ〜ぁ、逆ギレして歴史語り始めちゃったよ…。ねぇルミちゃん、エナカのヤツ担任にチクったりしないよねぇ」
ルミ「アイツにそんな度胸ないっしょ…男のクセに」
 これがアタシ、エナカじゃなくてルミの方。ちなみにエナカは男だかんね!って、そーだここからが大変だったんだ。

担任 「どーだエナカ、解ったか!」
エナカ「…」
担任 「クッソガキがぁぁぁぁぁーーーっ!!」
エナカ「っ!」
 ガッシャーンッ!!
 完璧にキレた担任が、エナカをブン投げた。エナカは窓ガラスを頭から突き破り、校庭の植木も突き抜け、地面で一周半回転したのち止まった。たぶん面談室 が一階じゃなかったらエナカは赤くなって、青くなって、冷たくなって、硬くなって、灰になって、星になって、思い出になっていたことだろう。でも、案外エナ カは頑丈だった為、窓ガラスで手を少し切っただけだった。
 むしろ大丈夫じゃなかったのは担任の方だ、キレて苛められてた生徒を投げた教員の話題は学校からPTAへ、しかしそれだけでは治まりがきかずテレビと新聞に 大々的に載り、一躍有名人となってしまった担任は社会現象まで起こしてしまったのであった。
 ね、かなり悲惨だったっしょ?でもアタシにとっての可哀相な出来事はこれからなのよ、ついでに書いておこう。
 それは友達だった子とその事件について話してた時。

教室
女子1「でも今度のは驚いちゃったよねぇ」
女子2「ホントに投げ飛ばすんだもんねぇ」
ルミ 「でも前からウチの担任なんかヤバかったよね」
女子1・2「アハハッ!ルミちゃんそれ酷くなーい」
 突然なんだけど、アタシが考える社会の仕組みを言わしてもらいまーす。つっても、まぁ難しいことじゃないから簡単に聞き流して下さいな。え〜っ、この社会 には皆それぞれ役割ってモンがあって、その役割に合わせたキャラクターを演じてる気がすんのよ。もちろん学校の中って社会の縮図って位だから、クラスにだ ってそれが存在する。まぁ解らないんならいーや、気にしないでよ。ちなみにこの頃のアタシの役割は「女子のリーダー」で、キャラは「毒舌キャラ」う〜ん… なんともアタシらしい。まぁ小学生なんて皆こーゆう子どもが人気者だしね。
 話しがかなりそれちゃったんだけど、まぁあんま気にしないで続きをどーぞー。

女子1「でもさぁでもさぁ、まさかテレビに出ちゃうなんて思わなかったよねぇ」
女子2「ねぇ〜、私なんかインタビューされちゃったもん!」
ルミ 「でもインタビューされたって、どーせ足元しか映んないしね」
女子1「アハハッ!」
女子2「そーだけどぉ〜」
 はーい、ここで気付いちゃったりしちゃうんだと思うんだけど、こんなつまんない会話一つにも役割とキャラが出てる訳ですよ!え〜っ、まず女子1が話題を 出します、ここではエナカの話題。ちなみにこの女子1のキャラは明るくってうるさいタイプが多い気がする。
 そして女子2が相槌をうって話しを広げまーす、インタビューされたとかそーゆー感じで。この役割を担う子はブリッ子だけど計算してるのと、イマイチ目立 たないけど頑張っちゃってる子に多い気がしない?
 一応この時、会話に登場してないんだけど女子3がいて、何か話そうとしてんだけど結局参加できなくて誰にも聞こえない声で相槌をうってる場合があるね。 ちなみにこの時に居たのはヒロエって子だったな。こーゆー子は次のイジメのターゲットにされることが多いよねっ!
 そしてアタシ!もちろん皆が集まってる机もアタシの机!つまりリーダーね。リーダーの役割を説明しちゃうと、行き先を決めること(トイレとか、放課後の 道草とか)と、次のイジメのターゲット選び、もちろん次はヒロエを選ぶつもりだったんだけど…。他にも役割あったよーな、たいしてなかったよーな…そんな感じ。
 そしてもう一つ、この頃のアタシでは知る由もなかったリーダーならではのキャラがあった。…って、また派手に横道にそれてしまった、まーだいたいのこの 後の展開わかっちゃってんだろーけど、続きどーぞ。

女子1「そーいえばエナカ、もぅ学校きてるんだよねぇ?」
女子2「なんかぁいろいろあって、親と校長が話し合ってる間、毎日保健室にいるらしいよ」

 そうだ、ここでアタシは失敗したんだ。

ルミ 「エナカの奴、あそこで死んじゃえばもっと楽しかったのにね」
女子1「ん…うん…」
女子2「ね…ねぇ〜」
 しまった!!流石にアタシもそぅ思って焦ったよ。焦ってテンパるとロクなことがない。ってか、ロクな結果にならない。

ルミ 「ってゆーかヒロエも何か喋りなよ!」
ヒロエ「えっ…」
 ドンッ…。

 いちおう言っておくんだけど、この時アタシは突き飛ばそうなんて思ってなかった。まして…

 ガシャーンッ!
女子1「ちょっ…大丈夫!?」

 ましてヒロエのバランスが崩れて…

女子2「血が出てる!大丈夫?保健室いこ保健室!」

 ましてヒロエのバランスが崩れて、後頭部を机の角にぶつけて流血するだなんて、想像すらしなかった。そんなもんが出来たら、ソイツはきっとエスパーだ。

ルミ「ご…ごめ…」

 頭にハンカチを当てられ保健室に連れて行かれるヒロエ、ヒロエを抱えながら保健室に連れて行く女子1と2、滴り落ちた血を恐がる女子達、滴り落ちた血に 興奮する男子達、そしてその他もろもろの生徒達。アタシの頭は停止してて、周りはまるでスローモーションみたいだったんだけど、気が付けばあっとゆう間に 全てが片付いていたよーな感じだった。
 女子1と2の証言で、アタシ一人がエナカ事件の犯人にされ、アタシの親一人だけが学校に呼び出され、アタシ一人が怒られた。ひどくムカついていたアタシ は、弁解もせずにふくれっ面で何故かクラスメイト全員に平謝りをした。何でか解らないけど、これがこの時とったアタシの精一杯な反抗だった。

 その後、もちろんアタシはダントツで学校一の苛められっこになった。












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 この頃のアタシはまだまだ可愛いアマチャンで、グループのリーダーが実は次のイジメのターゲットになりやすいキャラだって知らなかったんだよねきっと。
 んでまぁ、そんな感じで何事も無くも無くイジメッコからイジメラレッコに格下げになったアタシなんだけれども、ここで話しを終えちゃう訳にはいかないん だな、これがまた。なんつーか、こんなドロドロした話しなんか読みたくねーよって思っちゃってる人も沢山いんだと思う訳なんだけれども、一応アタシの斬っ ても切れてない人生の一部な感じなんで読んでみてよね。ヨロシク!

新担任「ねぇルミちゃん?」
 ある日、アタシは臨時で来た新しい担任に呼び出された。場所はもちろんエナカが旧担任に投げ飛ばされた、あの面談室。
ルミ「…」
 もちアタシは膨れっ面っしょやっぱ。今さらながら思っちゃうと、警察に捕まって事情聴取を受けてる感じに似てるかなとかって感じ。アタシは被害者で、悲 劇のヒロインで、シンデレラで、お姫様!…なのに心境はケチな盗みで失敗した泥棒の心境。オマケにこの後、新担任ってば…
新担任「ねぇ、ルミちゃんは何で他の子達と仲良くできないの?」
 これってなくない!?アタシは被害者で悲劇のヒロインで…あ〜もぅ、とにかく有り得ないよねっ!教育現場の衰退を目の当たりにしたって感じ!
 もちろんそんなこと言われちゃったもんだからアタシは…
ルミ「…」
って、なっちゃう訳よ!きっと、新担任は「素直じゃないな〜」とかって考えちゃったと思ってんだけど、それって違うよなっ!ホントわかってないよねコイツ!!
新担任「何で、給食のカレーに石鹸なんて入れたの?その前は、教室の中を水浸しにしたり、教室中の机にザリガニ入れたり、爆竹投げ入れたり…それ全部この 一週間だけでだよ?」
 …う〜ん、まぁこの言葉は忘れてよ。
 今考えるとイジメラレッコってか、最悪のイタズラッコだねアタシ…。
ルミ 「…」
新担任「他の先生達の話しだと、ルミちゃんはクラスの中心だって聞いてたんだよ?」
ルミ 「…」
 まぁ、こんな感じの会話ってか、先生のヨイショな話しがずぅ〜っと続きつづけた訳なんだけれども、とある時ある先生の一言でアタシの沈黙が遂に破られたのさ。
新担任「ルミちゃんのおウチが大変なのは知ってるよ、でもルミちゃんがそんなだとお父さんの心配事がまた増えちゃうのよ?」
 他の人がどーなのかは知らん訳なんだけれども、アタシはこーゆーことを他人に言われんのが一番ムカついちゃうのですよ!つっても、お前にアタシの辛さの何 がわかんだよ的なムカつきじゃあなくて、いつもは食べてたニンジンをその日はたまたま残しちゃったら、それをたまたま見てた人に嫌いでも食べなさいって言 われた時みたいなムカつき。いや、食べれるから!みたいな…う〜ん、なんかあんまり良い喩えが思いつかないんだけど、まぁいいや続き行くよ!!
ルミ 「そっ、そんなんコレとは関係ないじゃん!!」
新担任「関係ない事ないでしょっ!!」
ルミ 「っ!?」
 新担任ってば、いきなし怒鳴るもんだから、さすがのアタシもビビッちゃったよね。でも、この新担任が本領発揮したのはこれからだった。
新担任「いい?ルミちゃん良く聞いて、ルミちゃんにとって今が一番大切な時期なの!これからルミちゃんが大人になる為の土台を作ってるのよ。もし土台がし っかりしていなかったら…」
 この小学校教員の在り方と教育についての有り難い弁論は小一時間に渡って続き続けたのでしたよ。
新担任「話しが長くなっちゃったけど、私はルミちゃんをとっても心配してるのよ。ルミちゃんだけじゃなくてルミちゃんのご家族にも…、解る?ルミちゃん」
 新担任ってば、まーたそんなこと言っちゃうもんだから…
ルミ 「…か」
新担任「ん?どうしたのルミちゃん?何か言った?」
ルミ 「バ〜カ」
 ほ〜ら言っちゃった。この時の新担任の顔ってば、今でも忘れらんないよ。

父「もーし訳御座いませんでしたぁ!!」
 あの後、さっきまで家族に迷惑かけるなと言っていた新担任は、もちろん速攻でアタシの父親を学校に呼び出した。
父「ほんとーに、ほんとーーっに、親子共々反省しております!!」
 だけど、父の大声に教師達は圧倒されて何も言い返せず、ただ少し引き気味で父をなだめていた。アタシはとゆーと、父親の態度と大声が恥ずかしくって隙を みて職員室から逃げ出した。





■■ To be continued. ■■





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